『なぜ、悩む!』幸せになるこころのしくみ


「ダーナ」2005年秋号(佼成出版社)  DANA INFORMATION BOOK

 作家・僧侶の玄侑宗久さんとスリランカ仏教界長老のA・スマナサーラさんが現代の社会の風潮について語り合いながら、幸せを感じるこころのしくみを解く対談集。概念にとらわれて悩みを抱え込みがちな現代人に、仏教の見方に基づいた生き方のヒントを教えてくれる。

「カルナ」2005年12月号(10月21日発売)  BOOKS ●気になる本たち

 テーラワーダ仏教(上座部仏教)の僧侶でスリランカ生まれの「長老」アルボムッレ・スマナサーラと、禅僧で芥川賞作家の玄侑宗久の二氏が、思うまま語り合った。日本の教育の問題から、自由とは、悪とは、死とは……まで、幅広くつっこんだ内容から、人はなぜ不安になったり、悩んだりするのか、どうしたらよいのかを解いてゆく。
 僧侶同士の会話なので、難しいところもあるが、本来、仏教とは質問と答えから成り立っているものだという。
 初期仏教(伝統仏教)と禅宗という、同じ仏教でも立場の違う意見がつっこみ合うことで、私たち一般人にも、仏教ってこういう教えだったのが、とおぼろげながら見えてくる。

大法輪」 2005年9月号  書物の輪蔵

 『なぜ、悩む!』は、臨済宗僧侶で作家の玄侑宗久氏と、スリランカ上座仏教の長老A・スマナサーラ氏の対談集。片や大乗、片や上座部、それぞれの立場から忌憚ない言葉が飛び交い、きわめて刺激的で有意義な対談がなされている。たとえばスマナサーラ氏は、大乗仏典である般若心経を「上座部の立場からすると、色即是空はいいが空即是色は間違い」と大胆に指摘。玄侑氏はその言葉を受けて、方便ということを重視する大乗の立場を明示しながらも、上座部の明快な教えに感嘆する。
 本書はまた、人間の孤独や不安、死、あるいは教育や医療など、普段の生活に密着したさまざまなテーマについても二人が語り合い、読む者を勇気づける内容となっている。ぜひ読んでみてほしい。


河北新報 2005年8月1日号  読書欄 悩みの源どこにある 仏教土台に心の問題追求

 「なぜ、悩む!幸せになるこころのしくみ」は、福島県三春町在住の僧侶で芥川賞作家の玄侑宗久さんと、スリランカ生まれの仏教指導者スマナサーラ師の対談録。「煩悩と本能は違うのか」「自由とは何か」「善とは、悪とは」…。二人の“世間話”(雑談)は枝葉を広げつつ、現代的な心の問題に深く切り込んでゆく。
 スリランカに伝わる初期仏教は、ブッダのもともとの教えを色濃く残しており、日本の大乗仏教との間にはさまざまな相違点がある。スマナサーラ師は、日本では最高の経典とされる「般若心経」にも「間違いがある」と指摘する。仏教の精髄とされる「空(くう)」や「山川草木悉皆(しっかい)成仏」の思想も日本的な方便の産物と映るらしく、師の鋭い弁舌にさらされる。
 玄侑宗久さんは、僧として先輩格のスマナサーラ師に敬意を払いつつ、落ち着いた口調で禅と日本文化の考え方を提示する。仏教という土俵の上で二つの文化が理解を深め合う様子は、国家間のあるべき姿を示しているようだ。仏教は、われわれの日常生活と深くかかわる、生きた宗教なのだという実感がわいてくる。

中外日報 2005年7月26日号  中外図書室  禅と上座仏教の対話、浮かび上がる<違い>

 この本はスリランカ初期(上座)仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老と僧侶・作家の玄侑宗久氏との二日間の対談の内容を詳細に記録、編集したもの。日本文化の“顔”である禅の伝統と初期仏教との着眼点の違いがくっきりと浮かび上がっている。
 話の内容は多岐に及び千変万化するため、対話の焦点を絞りにくい面がある。しかし読み進んでいくと、人生に役立つ見方や生き方のヒントがあちこちに見つかる。
 「仏教思想はこのように僧侶たちがあらゆるテーマで自由に対談することによって発展した」とスマナサーラ氏。
 「長老の語ることはじつにシンプルだ。お釈迦さまが、どう考え、語っているか。そこにすべての基準をおき、それによって人間の世界を眺めている。御釈迦さまのされたとおりにすれば、悩みはなくなる。方便は大切だが、方便の海に溺れている我々の現実に、長老の言葉はじつにさわやかに響く」と玄侑氏。
 釈迦の教えを奉ずる長老に、今の日本がどう見えるのか、という日本人論にもなっている。
 解剖学者の養老孟司氏は「私が佛教に魅かれるのは、佛教は脳科学のはじまりだから」「佛教の師と仰いでいるお二人の興味深い対談」と本書を絶賛している。

福島民友 2005年7月10日号  文化面「読書」 ―人生に役立つ物の見方―

 僧侶で作家の玄侑宗久さんと、スリランカ仏教会の長老であるA・スマナサーラ師との対談。
 玄侑さんは禅宗。スマナサーラ師は1980年に来日し、大乗仏教に対しては伝統的仏教といわれる初期仏教の伝道にあたる。
 仏教者としての立場での対談だが、副題に「幸せになるこころのしくみ」とあるように、「自由」と「規律」とか「正義と悪」「不安と孤独」などといった、ふだんの生活に密着したさまざまなテーマについて論じられる。
 両氏による「世間話」の中には、私たちが生きる上で役に立つ物の見方とか、ヒントなどがたくさん散りばめられている。
 興味深い指摘もある。たとえば「般若心経」にある有名な「色則是空」。スマナサーラ師は、この後に「空則是色」と続けるのは完全に間違っている、と言い切る。「法華経」についても、インド人だったら恥ずべき「作品」とも。

福島民報 2005年6月25日号  文化面「読書」 玄侑がスリランカ仏教界長老と対談 ―幸せへのヒント満ちる―

 三春町の芥川賞作家玄侑宗久とスリランカ仏教界の長老アルボムッレ・スマナサーラの僧侶二人による対談集「なぜ、悩む!幸せになるこころのしくみ」が完成した。サンガ刊、一五七五円。
 今年一月と三月の二度にわたる対談の様子を編集した。「概念にしばられすぎている人間」「西洋医学と東洋医学」「死に臨む人に宗教は何ができるか」など十五のテーマについて持論を展開し、概念にとらわれて不幸に陥る現代人が幸せになるこころのしくみを解いている。
 玄侑は「日本の仏教がいかに方便に満ちているかが実感できた。方便の海に溺れている我々の現実に、長老の言葉は実にさわやかに響く」と感想を述べている。スマナサーラは「仏弟子の世間話から人生の役に立つ見方や生き方に関するヒントが見つかると思う」と語っている。
 出版にあたり、解剖学者の養老孟司は「仏教は脳科学の始まりで、お経はほとんど脳科学を説いており、学ぶことが多い。実に興味深い二人の対談だ」とメッセージを寄せている。