さすらいの佛教語 目次
----------------------------------
さすらいの佛教語:第38回 【一大事】
さすらいの佛教語:第37回 【自由】
さすらいの佛教語:第36回 【出世】
さすらいの佛教語:第35回 【ご馳走】
さすらいの佛教語:第34回 【ゴタゴタ】
さすらいの佛教語:第33回 【藪と野暮】
さすらいの佛教語:第32回 【利益】
さすらいの佛教語:第31回 【袈裟】
さすらいの佛教語:第30回 【説教】
さすらいの佛教語:第29回 【おっくう】
さすらいの佛教語:第28回 【けげん】
さすらいの佛教語:第27回 【あまのじゃく】
さすらいの佛教語:第26回 【爪弾き】
さすらいの佛教語:第25回 【つっけんどん】
さすらいの佛教語:第24回 【台無し】
さすらいの佛教語:第23回 【砂糖】
さすらいの佛教語:第22回 【お陀仏】
さすらいの佛教語:第21回 【女郎】
さすらいの佛教語:第20回 【三千大千世界】
さすらいの佛教語:第19回 【祗園】
さすらいの佛教語:第18回 【ご開帳】
さすらいの佛教語:第17回 【ふしだら】
さすらいの佛教語:第16回 【めっぽう】
さすらいの佛教語:第15回 【がたぴし】
さすらいの佛教語:第14回 【工夫】
さすらいの佛教語:第13回 【ないしょ】
さすらいの佛教語:第12回 【うろうろ】
さすらいの佛教語:第11回 【油断】
さすらいの佛教語:第10回 【阿弥陀クジ】
さすらいの佛教語:第 9回 【素性】
さすらいの佛教語:第 8回 【餓鬼】
さすらいの佛教語:第 7回 【分別】
さすらいの佛教語:第 6回 【大丈夫】
さすらいの佛教語:第 5回 【退屈】
さすらいの佛教語:第 4回 【娑婆】
さすらいの佛教語:第 3回 【観念】
さすらいの佛教語:第 2回 【貧者の一燈】
さすらいの佛教語:第 1回 【皮肉】
----------------------------------
袈裟懸けとか袈裟斬り、などというと物騒だが、要は左肩から右脇下にかけて、と いう方向だけを意味している。袈裟にはこの「
偏袒右肩
(
へんだんうけん
)
」という掛け方のほかに「通肩」という掛け方もあるのだが、これは二十歳以上とか説法する場合というような限定がつく。
掛ける方向にはそういった共通性があるものの、しかし袈裟ほどさすらった物も珍しいのではないだろうか。
本来は、梵語の「カーシャーヤ」からの音写語だが、原語が意味するのは「
不正雑色
(
ふしようぞうしき
)
」と云われ、拾い集めた布きれを縫い合わせて作った外衣である。当然インドの土の赤褐色に汚れていたのだろう、形容詞としては「赤褐色の」という意味であり、袈裟そのものを
糞掃衣
(
ふんぞうえ
)
と呼ぶことさえあった。
しかしこれも中国から朝鮮半島、そして日本に来るあいだ、ずいぶん華麗な変身を 遂げた。
いつのまにか色も様々になり、継ぎ合わせていないものも出てきたし、大きさも五条、七条、九条、十三条どころか、じつは二十五条まで登場した。我が臨済宗で通常つけるのは七条だが、それ以上は大衣と呼ぶ。縫い合わせた「切り混ぜ」は、導師のみが着ける、などという勝手な決まりも、いつのまにかできてしまったのである。
こうした「切り混ぜ」のデザインは田圃にも見立てられた。やはりインドの言葉から中国で「福田衣」と訳されたのだが、その時点で、おそらくは五穀豊穣の願いが、 仏教徒の基本的な願いにもなったのだろう。同じデザインを小型化したものが
絡子
(
らくす
)
で、これを着けていれば大抵どこでも仏教徒として通用する。それがさらに儀式用に大型化したのが
大掛絡
(
おおがら
)
と呼ばれる代物である。
まぁそんな複雑な区別など、一般の方にはどうでもいいことかもしれない。一応、知っておいてほしいのは、日本の僧侶の服装が、じつにさすらいの挙げ句のものだということだ。日本の着物の上に中国の公務員の服装であった衣を着け、その上にインド伝来の袈裟を着けるのだから、仏教のさすらいをそのまま身にまとうようなものだ。
本来の姿からさすらいすぎた坊主を憎む場合、一番さすらった袈裟を憎むのは自然なことかもしれない。