ふる里の誇りを再発見、次代に継承する「あなたが選ぶ『福島遺産 百選』」の選定事業は今月末の候補推薦の締め切りまで、あと十日余りに迫ってきました。今月に入って推薦が急増、日々、上位の順位は入れ替わっています。推薦に併せてふる里へのさまざまな思いが寄せられている中、今回は芥川賞作家として著述、講演などに幅広く活躍されている三春町在住の玄侑宗久さんに、ふる里や「福島遺産」に対する思いを話していただきました。
 ふる里はどこまでも「えこひいき」の対象です。他の地域を知るにも限りがあるわけで、そ「幅広い視野を持ちながら、ふるさとを積極的にえこひいきしよう」と話す玄侑さんの中で自分自身の人生と絡めてふる里は良いものと決めてひいきする。
 しかし、「えこひいき」という自覚は必要です。愛郷心は愛国心のベースでもあり、自覚がないと妙なナショナリズムに陥ってしまう。隣の町の人にとっては、隣の町がふる里。世界へ目を広げ、人間、生物というところまで思いを巡らすことが大切です。多角的な視野がバランスある愛情をはぐくみ、ふる里の良さを発見、再発見することにもつながります。
 私にとっての「福島遺産」は四季を通して来訪者を案内できる場所ですね。神秘的な輝きを持つ五色沼、裏磐梯の高原という自然の造形と、地域と宗教の一体感のある柳津の福満虚空蔵尊というコースでしょうか。温泉文化も忘れてはなりません。
 土地の豊かさは、ちょっと行くと景色ががらりと変わるということ。福島遺産の企画がプレッシャーとなり、地域独自の豊かさを大切にする意識の醸成につながることを期待します。
【裏磐梯と柳津仏教文化圏】
裏磐梯は五色沼などの豊かな自然で知られる観光地。玄侑さんは「造化の神の作ったもの」と表現する。柳津は、千二百年の歴史を誇る福満虚空蔵尊円蔵寺を中心に、独特な宗教的たたずまいを見せる。玄侑さんは、境内の源泉から温泉を提供するなど地域と寺との深い結び付きを評価する。
福島民友 2007年8月19日 
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