「『ひとり』のススメ」 なぜ、ひとりの時間を大切にする人たちが増えているのか? 
「ひとり」をどう生きる?
―武士道・仏教から「ひとり」で生きるヒントを学ぶ―
 
自分の判断を信じること・他の誰かと比較しないこと
右脳優先の呼吸法を行い「個」になる状況をつくる


 日々の仕事をしながら、ひとりである状態の自分になるのは難しい。そこで僧侶でもある作家の玄侑宗久さんに、禅の知恵を応用した自分の中の「個」を育てる知恵を聞いた。
 「個になるとは、他の誰かと比べずに生きられる自分を確立することでもあります。それには『比べる』という脳機能が使われない体験を、ときどき、意識的につくることが重要です」
 その知恵が鼻歌、水泳、喫水線呼吸法。坐禅ほど高度ではなく、日常生活で行える。
 「大脳皮質の左脳と右脳では機能が違います。比較する機能は、言語や計算をつかさどりる左脳で行われます。先入観や既成概念も主に左脳にある。そこで、右脳が優位な状況を作るわけです」

その1 歌詞のない鼻歌を歌う

鼻歌は、右脳優先の状態となり、他人との関係性を意識しない状況をつくり出す。できるだけメロディーだけのハミングがいい。歌詞があると、その言葉が左脳を目覚めさせてしまうからだ。鼻歌は、本来、生命体としての人間が、上機嫌のときに自然にでてしまうもの。全身を活性化させてくれる。周りに迷惑はかけないように。

その2 水泳が瞑想の役割を行う

水の中は、人間にとって、懐かしく、しかし不慣れな環境である。そこでは、左脳よりも右脳が優位になり、脳の最も古い層が活性化するはず。また泳ぐための手足の動きは、思考よりも筋肉自体の能力に依存する。これらは、瞑想に近い状況である。筋肉や内臓は、自分と他人とを比較したり、悩んだりはしないのである。



その3 電車の中でも行える喫水線呼吸法

体の中で、喫水線が上下することをイメージして行う呼吸法。
1.まっすぐに立つ
2.喫水線が足の先から脳天に向かって上がっていくことをイメージしながら、ゆっくりと息を吸う。
3.喫水線が脳天から足の先まで下がるイメージで、ゆっつくりと息を吐く。
この1〜3を繰り返して行う。喫水線が上下するときに「今肺に来た」「今肝臓に来た」と臓器を意識すると内臓が活性化する。しかも映像イメージは右脳優位に導く。


「ダカーポ」550号

EDITOR’S EYE

□「ひとり」のススメ
  
  「おひとりさま」を楽しむもよし、「孤高」をめざすもよし。“ひとり”をどう生きる?

「人間はひとりで生まれて、ひとりで死ぬ」。これが人生の真実だ。家族が多かろうが、友人・知人・愛人がゴマンといようが、ペットが何匹いようが、である。今回「ひとり特集」の取材で目からウロコだったのは、「孤独の大切さ」を提唱する明治大学の諸富祥彦先生の話。
臨床心理士でもある先生は、いろいろな人のカウンセリングを行っているが、孤独な時間に自分と向き合っている人が、考え方がしっかりしていると断言。普通の中・高生より、不登校のひきこもりの生徒の方が、話をしても自分をちゃんと持っているから面白いんだそうな。
先生によると、ひとり暮らしの独身者に、共同生活を希望する人が増えているとか。折しも、20代〜60代の独身男女7人が一緒に暮らす築150年の古民家「松陰コモンズ」を取材。みんなが自分の意見をはっきり言い、他人には流されない。自分のことは自分でやり、お互いのプライバシーには立ち入らないし、干渉しない。家族関係では、えてして誰かが自分の意見を押し付けたり、依存したり、干渉したりが付き物で。それがないから、自然で実にいい感じだった。みんなが自分らしく伸び伸びしていた。しかも、仕事に疲れて深夜に帰宅したとき、誰かと話ができるのが大きな喜びだとか。こういう個人がゆるやかにつながる暮らし方が、これからの理想形かもしれない。

志水京子