我が家には正月のしきたりが、ありすぎるほどある。これは我が家というより、長年のお寺の習慣である。ここでは、そのなかでわりと一般的なものを紹介しよう。
 元朝の四時に起きて若水を本堂に供え、五時からは一般の人々も参加して坐禅会が行われる。その後年頭の挨拶をしてお屠蘇やお酒、海老芋などをふるまうのだが、それが済んで一般の方が帰ってしまうと、それから徐に家族が書院に集まるのである。
 緋毛氈のうえに坐った家族は、あらためて皆で「明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願いいたします」と言って挨拶しあう。家族ながらもこんなふうにあらたまって礼を尽くし、お抹茶をいただきとき、じつに厳粛な空気がそこには流れる。
 軸物は必ず八方睨みの達磨図だが、これは禅宗の初祖を意識する、つまり初心に返ることを意味する。
 家族とは、気づいたらいつのまにか家族だったわけだが、本当はこうして共同生活者としてあらためて出逢い、挨拶を交わすことで家族になるのだろう。その意味では毎朝の出逢いも、小さなお正月である

「PHP」2008年1月号
「PHP」2008年1月号(PHP研究所)
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